傷付いた心を癒す哀しい詩(うた) JILS「SAD SONGS」
ヴィジュアル系シーンにおいて、20年以上にわたって悲しい音楽を創り続けている男がいるらしい・・・。
D≒SIRE(デザイア)のヴォーカル、幸也が、D≒SIRE解散後、悲しきソロ活動を経て結成したバンド、JILS(ジルス)のファースト・アルバム「SAD SONGS」。
俺がこのアルバムを初めて聴いたのは、多分20歳か21歳の時だったと思う。
別にわざわざこんなタイトルを付けずとも、彼の音楽は大抵悲しいが、それだけにバンドの気合いが感じられる名盤となっている!
Tr.1 「SAD SONG」
散文詩:幸也 作曲:幸也
ピアノとシンセによる1分弱のインスト・・・のはずなのだが、ブックレットには散文詩と称して、「君は行ってしまった・・・」から始まる、幸也によるなんだか異常に感傷的なポエムが載っているぞ(笑)。
うん、なんか分からんけど、とてつもなく哀しい事があったのだろう・・・。
インスト曲なのにも関わらず、歌詩(幸也はこう表現する)を付けてしまうのが、この人のオリジナリティであり、俺が大好きなところなのだ!
のっけから幸也ワールドが堪能できるぞ(笑)。
Tr.2 「SADNESS」
作詩:幸也 作曲:舜
ギターの舜による疾走感のある曲。俺はD≒SIREの聖詩の繊細で哀しいクリーンアルペジオも好きだが、JILSの舜のザクザクした激しいカッティングも好きなのだ!
幸也の悲しみ全開の泣きじゃくり歌唱によって、もはや歌詩は聞き取れないが、とにかく悲しいという事は伝わってくるぞ!(笑)
ちなみにこの曲、後にメンバーチェンジを経て再録されているが、幸也が高い声が出なくなったためか、キーが下げられている。
再録の中でも一番悲しいヤツじゃねぇか(泣)。
Tr.3「SOLITUDE」
作詩:幸也 作曲:MARIKI
「SADNESS」とは違い、サビで感情をあえて爆発させない事で、穏やかな哀しみを表現しているような曲。温かさを感じさせるようなサウンドが、何故だろう、逆に物悲しく聴こえてしまうのだ(泣)。
Tr.4「Re:pray」
作詩:幸也 作曲:蓮
「SOLITUDE」で感じていた穏やかな哀しみが、ゴメン、俺、もう耐えられない。吐(だ)しちゃうね。
イントロの緊急哀しみ速報(ノイジーなギター)が開けると、総(すべ)てを喪(うしな)った男、幸也の慟哭が始まる。
Bメロからサビにかけての流れが素晴らしい!名曲!
Tr.5「Suspicious」
作詩:幸也 作曲:徹
重くて激しいダークな曲。サビの後には、幸也の謎セリフ「潜在意識の中、背徳の殉教者が贖う・・・」、そして貴重な幸也の絶叫シャウト!
ヴィジュアル系としてやっていくためには、こういう曲も必要なんです・・・。
そんなヴィジュアル系の哀しいサガを感じさせる曲。
Tr.6「Sin ~約束の日、絶望の花咲く丘で~」
作詩・作曲:幸也
幸也作曲の長尺バラード。俺、何度この曲に泣かされたか分からねえ・・・。
数あるヴィジュアル系バラードの中でも、(俺的に)5本の指に入るであろう大名曲!
Tr.7「心の音 -beat of mind-」
散文詩:幸也 作曲:幸也
ピアノとシンセによる4分20秒のインスト(幸也の哀しいポエム付き)。
俺は、この曲を聴きながら夜の海沿いを歩くのが好きだ。
暖かく、優しい気持ちになれるから・・・。
哀しみを知ることで、人は少しだけ優しくなれるのかもしれない・・・。
そんな事を感じさせるエンディングだ。
このアルバム、メンバー5人全員が作曲しているのが良いな。
ワンマンに思える幸也だが、意外と彼が本当に望むのは仲間たちとの絆であり、だからこそ彼は孤独の悲しみを深く嘆くのかもしれない・・・。