バイトをクビになった話 ~哀しみの警備員編・後編~

かくして俺は、警備のバイトをする事となった。(前編参照)

俺の勤務態度は最悪だった。

働いて最初の数か月は、2週間に1度は遅刻していたと思う。

仕事のミスもそれほど重大なものではないが、極めて多かった。

その度に怒られるのだが、俺はなぜだか怒られると離脱症状のようなものを起こし、その記憶を忘れてしまう。

ゆえに、何度も同じミスを重ねてしまうのだ。

のちに、上司が注意点をメモに書いて渡してくれるようになった。

これにはかなり助けられた。

 

とまぁ、そんな感じで働いていたので、俺の勤務評価は最悪だった。

ここで功を奏したのが、今までのバイトは数か月ごとに契約更新をしていたのだが、このバイトでは1年ごとの契約だった事だ。

この点が、俺が無能の立場で2年間も雇用状態にありつけた最大の要因だと思っている。

最初の契約更新、すなわち働いてから1年が経過したタイミングで、俺は、所長、上司、俺の三者面談に呼び出され、俺の契約を更新するか否かで、意見が分かれているという事を伝えられた。

しかし、直属の上司が俺をかばってくれ、また、1年目という事もあり、とあれ契約は更新されたが、俺には業務面での努力目標が課された。

これに達しなければ、2度目はないという、いわばイエローカードを受け取ったのだ。

 

結論から言えば、俺はこの努力目標に達することはなかった。

これが、俺が2年でこの職場を去る事になった経緯である。

 

最後の勤務を終え外に出ると、仕事を失い、何者でもなくなった俺を、11月の肌寒い風が包んだ。

ふいに、シャッフル再生していたiPodから、シャ乱Qの『シングルベッド』が流れた。

 

「今夜の風の香りは、あの頃と同じで・・・、次の仕事でもしてりゃ、辛くないのに・・・」

 

(哀しみの警備員編・完)